シンポジウム7:感染症・ウクライナ侵攻から見えてくる国立病院機構に期待される公的役割


 本シンポジウムは、2023年10月20日に広島で開催された第77回国立病院総合医学会で開催されたシンポジウム7についてです。

 本シンポジウムにおいては、当会の現代表理事でもある中川義信が座長を行い、国内の危機管理を含めた医療インフラとしても位置付けられる国立病院機構の公的役割についてのテーマを取り扱いました。

シンポジウムの目的

 2020年に始まったCOVID-19によるパンデミックはオミクロン型となって徐々に収まりつつあります。しかし、現実には感染症は2003年SARS(重症呼吸器症候群)、2009年新型インフルエンザA(H1N1)、2012年MARS(中東呼吸器症候群)、2020年COVID-19とこの20年間で危機を起こしうるウイルスが4種類発生しており、今後も別のウイルスによるパンデミックが継続することは想定せざるを得ない状況です。さらに、我が国では大規模な地震や台風などによって引き起こされる大規模災害は継続的に発生しており、災害対応時の医療機能は今後も大きな社会的テーマとなりうることが想定されます。また、直近ではロシアのウクライナ侵攻により、中国の台湾併合の可能性や北朝鮮の朝鮮半島有事が生じうる可能性、など日本を取り巻く国際情勢の悪化も強く懸念される国際状況となり、近隣地域における周辺事態が大きく社会に影響する可能性が現実味を帯び始めている状況下にあります。国立病院機構はCOVID-19においては独立行政法人国立病院機構法第21条1項に基づく厚生労働大臣からの健康危機管理上の要請による対策対応を経験したばかりです。このような社会情勢において、現実的に健康危機管理にまず対応するべき社会的要請を受ける機構は、いかなる機能を求められ、準備していく必要があるのか、まずはこれまでの対応と直近に想定される事態から整理することをシンポジウムの目的としています。

座長

 シンポジウムにおいては、当会の現代表理事でもある中川義信とともに、元防衛省・防衛医科大学校防衛医学研究センター准教授で元国立保健医療科学院健康危機管理研究部長であった現東海大学医学部臨床薬理学教授の金谷泰宏先生に共同座長をしていただいています。

シンポジスト

 以下の三名の方に講演をいただきました。

吉田学先生:多摩大学医療・介護ソリューション研究所 客員教授​
元厚生労働省事務次官

Dr. Olena Nesterenko:MD, Blood banking & Transfusion medicine specialist
Head of the Department of Clinical Transfusiology of Blood Service Center
National Children’s Specialized Hospital “OHMATDYT”, Ministry of Health of Ukraine (Kyiv, Ukraine)

山田憲彦先生:神奈川県非常勤顧問
元航空自衛隊空将

シンポジウムにおいて講演いただいた各先生のタイトルは以下の通りです。

吉田 学 先生:「健康危機時における国立病院機構への期待」

Olena Nesterenko 先生:Changes of Ukrainian medical system in wartime: the experience of National Children’s Hospital “OHMATDYT”

山田 憲彦 先生:「公的医療機関に特に望みたい 危機対応を意識した平素の体制整備上のポイント」

 それぞれの先生方の講演内容については別途これからまとめてゆきます。

 また、本シンポジウムと関連して、ウクライナの医療の直面した状況をより詳しくお伝えするウクライナの医療現場をうつした写真展“Fight for life, health and future: Ukrainian healthcare system in Russian-Ukrainian war”について、同時に開催いたしました。現場に直面した医療スタッフがその場で撮影した写真ですので、戦時下という性質上辛いシーンもありますので閲覧には注意ください。

当会のシンポジウムにおける役割

 当会は本シンポジウムにおいて、事前打ち合わせや資料作成時のクラウド機能の提供など、主に支援的な役割を担当いたしました。

 オンライン会議システム

 Olena Nesterenko 先生はウクライナのキーウにある国立小児病院OHMATDYTの医師であり、会議当日の参加もオンラインでの参加となることから、現地との接続をする必要がありました。この接続を当会のシステムを用い、事前の数度にわたるミーティング、そして本番の10月20日の第77回国立病院総合医学会のシンポジウム7でも当システムを現地会議場で設定の上で活用しています。